フレディのふしぎな回答（その１）
（2019/6/30）
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（クイーン人気の再燃のためか、このトピックはたいへん多くの来訪があり驚いています）
英国のロックバンド、クイーン――特にそのボーカリストのフレディ・マーキュリー――を描いた映画、「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットした。
私は1970年代に彼らの音にひかれ、コンサートへも行った現おじさんであるが、この映画を観ている最中、ある場面で背筋がゾクッとした。
四十数年前の謎が、そこでふいに解けた思いがしたのだ。というのは……。
あっさり「Queen II」と題されたクイーンのセカンドアルバムがある。発売は1974年で、伝説の初来日（1975年）より前。
当時、彼らに米国でインタビューした音楽評論家・東郷かおる子によると、ドラムのロジャー・テイラーあたり、日本がどこにあるのかもよくわかってない様子だったという。
このQueen IIの、いわゆる日本語ライナーノーツにおもしろい一覧表が載っていた（後にCD時代になってからは、別の内容へ変えられてしまったと思うが）。
各メンバーに、「好きな／嫌いな音楽グループ」「好きな女優」「好きな食べ物・飲み物」「身長／体重」等々を尋ね、答えてもらっているのだ。
これはインタビューではなく、各人が質問の一覧表に記入したもののように見える。身長はまだしも、体重まで尋ねているさまに医者の問診票を連想してしまう。
ちなみに、体重が最も軽いのはフレディ（約54キロ）で、最も重いのはギタリストのブライアン・メイ（約67キロ、ただし身長約185センチ）。
質問文の英語が明らかに非ネイティブのもので、メンバーの回答の様子からしても、日本独自のアンケートと思われる。
好きな食べ物、身長／体重といった質問じたい、ロックミュージシャンというより日本のアイドル向け質問でよく見る内容だ。よくていねいに回答してくれたものである。
当時の日本のクイーン観が、多分に「アイドル」だったことが伝わってくる（もっとも、かのビートルズのアルバム「Help!」だって、原題はジョン・レノンの切実な悲鳴・SOSだったのに、日本では「４人はアイドル」という気分快晴な名称に変えられたのだ）。
「あなたが嫌いなグループは？」という、よくずばり尋ねたなという質問に、ロジャー・テイラーとブライアン・メイは、「カーペンターズ」と答えている。
クイーンがビッグになった後年なら、公にこんなコメントはしないだろう。欧米でなく、遠い（どころか、場所をよく知らない）日本向けだから油断したのかもしれぬ。
一番好きな国はどこですか？
さて、そこで本題なのだけれども、アンケートの質問のひとつに「一番好きな国はどこですか？」というのがあった。
他のメンバーが、当然ながら母国「England」と回答するなか、フレディだけが、「Japan」と回答している。
正確にいうと、ロジャー・テイラーの回答は「England」でなく、「すべての国を見終えるまで、わからない」というもの。
ただ、ロジャーは「音楽以外の特別な才能は？」という質問に「ほらふき」と答えたり、「好きな雑誌」という質問に「Queen Magazine」と答えたり、ジョークな回答が全体に多い。
英国人がずばり「好きな国・英国」と答えてもおもしろくないので、これはひねって答えてくれたものだろう。
しかし、ロジャーとは対照的に、20近い質問に対して一つもジョーク返しがないフレディが、「最も好きな国＝日本」と答えている。
（注：フレディの回答に、一つだけ冗談に映らなくもないものがあるが、これも実際には、彼の死にダイレクトに関わる真正直な回答だったことが、今になってみるとわかる。
けれども、その回答が何を意味するのか、1970年代に理解できた日本のファンはまずいなかったと思う。このあたりは後ほどふれる。）
「最も好きな国は？」→「日本」というこの回答を見て、私が当時思ったのは、日本からのアンケートだから日本と書いてあげようという、西洋スターによくある「リップサービス」というものだった。そこまでしなくていいのにと感じるほどの。
くり返しになるけれど、これは彼らの初来日（そこで予期せぬ熱烈な歓迎を受けた）より、前に実施されたアンケートなのである。
異質な存在に見えなかったフレディ
写真／映像などで初めて見たフレディ・マーキュリーが、後年の彼（ヒゲ／短髪）だったという人は、「容貌が何となくアラブふうだな」といった印象を受けたかもしれない。
けれども、1970年代のクイーンの写真（みな肩までの長髪）に、フレディだけ外観がちがうという感じはなかった。ビートルズやレッド・ツェッペリン同様、クイーンは生粋の英国人４人のバンドに見えた。
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