混雑、大きなもの、大阪(その4)
(その3続き)
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そうはいっても、あるところがすでに「1強」化してしまい、他と大きな差ができている場合、その絶対性がゆらぐことはあまりないのではなかろうか?
必ずしもそうとはかぎらない。
東京を拠点としつつ全国の人々を引き付けてきた、こんな存在を考えてみたい。プロ野球の読売ジャイアンツである。
私が子供のころ、長嶋・王が現役で、V9(9年連続日本一)という絶対的な黄金時代が続いていたので、私も自然に巨人軍のファンであった。
日本シリーズ優勝を、1年も取りこぼさずずっと続けるのは不可能にしても、巨人だけが特別に強い状態は、どこまでも続くだろうと思われた。
というのは、東京にかぎらず他の地でも、テレビでは巨人の試合ばかり放送され(ゴールデンタイムにほぼ毎日)、これが常に高視聴率。結果として、日本の野球少年は巨人ファンだらけ。
そのなかから育った高校、大学の有望選手は、当然多くが、「巨人でなければ進学/社会人野球入りします」「契約金が高くても、他のチームはいやです(特にパ・リーグはぜったいいやだ)」というふうであった。
人気があり収入が多いから、ジャイアンツは資金潤沢で、選手や施設にお金も投じられる。
こうした種々の好条件が、また強さと人気をもたらす一方、パ・リーグの選手などは、人々に顔を知られる機会さえめったにない。
この絶対的強者のステータスが、ゆらぐ死角など存在しないように見えた。
ところが、いま日本一強いチームはどこにあるだろうか? 現時点で大方の意見が一致すると思うけれど、九州・福岡にある。
日本の反対側、北海道にあるチームも、非常に強い。いまや大エース・ダルビッシュはいなくなったが、昨年もしっかりシーズン2着。
あるいは、楽天というパワーある会社が、東北・仙台にチームをもっている。
これらすべてが属すパ・リーグが、今やセ・リーグを力でかなり上回っていることを、交流戦の驚くべき戦績差は示している。
さまざまな点が、まるで逆さまになったような変化だ。
なぜ、こうなったのだろうか?
たとえばソフトバンクや楽天は、もしかすると宣伝効果の点で、可能なら首都圏に球団をもちたかったかもしれない。
しかし、それが無理なしくみが野球界に存在したり、福岡や仙台へ行ったほうが良い面もあったりしたため、それらの地に本拠地をもったわけである。
もともと東京に本拠地があり、そこから北海道へ移ったファイターズの場合も同様だ。
これと同じような変化を生もうとするなら、重要なのは効果的な「しくみ」のアイデアであると共に、それを現実化させる具体的な「原動力」だろう。
東京が他の地域から人を吸引し続ける力は、就職機会、魅力ある遊び場、多様なショッピングエリア、「中央」なりという感覚など、さまざまな要素から成っていよう。
このなかで、そこを変えると流入/流出の様子が大きく変わる「核」が何かといえば、やはりすべての基盤である「食べていくこと」、仕事の有無やその条件の問題だと思う。
ほかの点は、むろん人によって非常に重要な場合はあると思うが、大勢を決定づけるような要素ではない。
冒頭で、満員電車に関する私の体験を書いた。
電車は空いていて座れるのが一番でありつつも、私は子供の頃からの「これが電車だ」という常識のせいか、たとえば山手線で電車のドアが開くたび、外国人を含む多彩な人が乗り込んできて、がやがや話をする混雑した光景が今も何だか好きである。
しかし、地方の広くて空気のおいしいところで育った人は、そうした東京の人いきれが、きわめて不快に感じられるようだ。
地元でゆったりとした家に住み、通勤も楽で、商業施設、病院、学校などのインフラがそろっているなら、混雑した東京よりそちらでの生活のほうがいいのである。
いまの流入の数字が示すほど、入ってきた人たちみなが自分は東京にフィットすると感じているわけではない。
若いころ何年かいておもしろかったがそれで十分とか、ときおり訪れて用足しをすればいいといった人も多いだろう。
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