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 むかしは実例がいなかったので、女子にそうした方向の欲求はあまり無いのだと思っていたが、それは誤りであることがわかった。

 かっこいい男たちが戦うところをただ「観る」だけでなく、自分も参加する側、華麗にアクションする側に回りたい欲求をもつ女子が、少なからず存在している。

 そうした観点からも、黄門一行が男のファイター四人で旅をするなら(うち一人の武器は、ネームバリュー)、悪とバトルする女のファイターが一人は入っていた方がよかったろう。

 その意味で今回のつくりは、いまの視聴者に向けられていつつ、過去作よりむしろ、時代との斬りむすびを欠いている気がしたのである。

 すでにおわかりであろうが、冒頭で私が「赤」と表現してみたのは、女性視聴者のことである。

 「女⇔赤」という結びつけをもしかすると偏見と感じる人があるかもしれない。
 しかし、私は女性が数ある色のなかでどれほどピンクを特に好むか、および男がユニフォーム以外、赤い服の着用にどれほど抵抗を感じるかを、時代劇より長い期間見てきた者であるから、ご容赦いただきたい。

 今回「水戸黄門」の流れをみると、次の旅から随行「くノ一」を登場させる布石を打っていたようではある。
 しかし、そのつもりならなおのこと、先送りしないほうがよかった。

 この役を引き継ぎそうな人物の、お風呂シーンは今回すでに有った。しかし、ファイターとしての立ち回りのほうは無かった。

 このあたり、伝統「くノ一」の役柄がやはり、「オヤジ等」対策としてだけとらえられている印象を受けたのだった。

 もし次の旅から加わるのであれば、アクション場面にも初代に近いかっこよさを期待したい。
 ちょっとハードルが高い話であるが、撮るほうのウデ゙もふくめて。

時代劇と世界との斬りむすび

 「水戸黄門」についてはすでに配役は決まっているからいいとして、私は先ほど書いた意味で、すなわち男の視聴者だけでなく「赤の緑」を魅了するという意味で、非常にかっこいい「くノ一」を演じられる人物に心当たりがある。

 時代劇の価値、特に、そのグローバルな価値ともかかわりをもつ話なので、ちょっと付け加えたい。

 3年ほど前に公開された、「太秦ライムライト」という映画がある。太秦(うずまさ)は、今回の水戸黄門もここで撮影されている、京都にある時代劇撮影の「聖地」だ。

 この映画は、テレビの時代劇番組が消えてしまい、映画パークのチャンバラ・ショーで糊口をしのぐ「斬られ役」を主人公としている。

 主演は、「5万回斬られた男」の異名をもつ本物の斬られ役、福本清三。
 この人は、民放地上波、最後の時代劇となった「水戸黄門」第43部(2011年)にも出ていて、「太秦ライムライト」は2014年の映画。なんとリアルな……。

 チャップリンの名画「ライムライト」は、落ちぶれていく道化師と、逆に彼の助けで成功の階段を登っていくバレリーナの物語である。

 「太秦ライムライト」には、この斬られ役から「殺陣(たて)」(立ち回り)を学び、それをきっかけにスター女優になっていく女の子が登場する。これを演じているのが、山本千尋である。

 この人は、小学校&高校時代に、武術太極拳選手として世界ジュニア武術選手権大会で金メダルを2度とったという、特級のバトル系運動能力をもっている。
 また、中学のころ、徒手のみならず剣術、槍術でも無敵だったという経歴は、いっそう時代劇との親和性を感じさせる。

 このような経歴がなくても女優になれるだろうルックスであり、現在まだ21歳。
 この作品が映画デビューということで、せっかくの時代劇との縁である。いつか、できることならテレビ放映の時代劇で、美しくかっこいい立ち回りを見せてもらいたいものだ。

 そういえば、先述の「風」の主役、栗塚旭も、この映画で元気な姿を見せていたのだった。

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