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蔵で眠っている働き者

 そんなわけで、やはり街を大きく変えがちなもう一頭の怪獣、「ガメラ」である。

 あのコワモテのゴジラさえ、目に見えて女性客を引き寄せるとすれば、ゴジラ以上に「かわいい度」が高いガメラに、同等以上の引力がないはずがない。

 ゴジラとガメラ、ファイターとしてどちらが上かは意見が分かれるところだろうが、こと「かわいさ」となれば、両者には、磯野波平とタラちゃんが戦うくらいの地力差があろう。

 以前、たまたまネットの一般ニュースで、次のような記事を見かけて、へえと思ったことがある。

 欧米人――別に、日本オタクの人々ではない――が、「映画の巨大モンスターのオールタイム・ベスト10」というのを選出していて、見ると、1位ゴジラ、2位キングコングに続き、ガメラがしっかり3位に入っているのである。

 日本と関係のない、地球の裏側の人々が選んだ「世界ランキング」であるから、このネームバリューはたいしたものだ。

 しかも、この選出がなされたのは大昔ではない。2012年である。その後、強力なキャラなんか現れていないから、4年後のいまやっても結果は同じだろう。

 当然のことながら、ガメラは女性のみならず、「オジサン/おニイちゃん」サイドにも吸引力をもっているわけである。

 この人気スターの、幼児期すりこみは、古く1965年から始まっているので(映画「ガメラ」は海外へも「Gamera」名で輸出)、あのオオガメに内心強く引きつけられる層は、いま50代まで及んでいる。

 いや、ガメラ初作は子供だけでなく成人にも受けた映画であって、そうであれば……。

 いま経済がこのような状態でもあり、怪獣にかぎった話ではないけれど、日本がこれまで世界で築いてきた遺産を、現在の私たちは可能なかぎり活かすべきだと思う。

 アキバは、日本のみならず世界的に有名な街である。しかし、「アキバといえばこのショット」というような決定的なモニュメントは存在しない。

 仮に、西(新宿)の巨大ゴジラに対して、東(アキバ)に巨大ガメラ像なぞが作られれば、買い物客のみならず、国内外の観光客が巡礼(?)する一つの定番ルートになるに違いない。

 初めてこの街を訪れる人の9割くらいが、この像をカメラやビデオに収めるだろう。こんなオモシロ物体をあえて黙殺する人がいるとすれば、超・狂信的なゴジラファンくらいである。

 外国からのお客さんは、そうしたものをネットでよく見かけるように、YouTubeなどに「日本旅行記」ビデオをアップする。あるいは、ブログ等に旅行の写真を並べる。
 巨大な怪獣のショットなぞは、まちがいなくそこへ含められる。

 その映像を見て、また世界中の人々が、この像――および「店」――の存在を知る。「日本へ旅行して家電品を買う予定だけれど、どうせなら観光も兼ねて、あの怪獣の店へ行こうかな。子供も喜ぶし」。

 訪れた彼らがまた、記念ビデオ/写真を撮り、ネットにアップする。ガメラがくるくる回りながら天高く昇るように、こういうサイクルが確実に生まれると私は想像する。

技術の進歩が生むマイナスとプラス

 これも、「数十年前とは大きく変わった」事柄の一つといえようが――広告や宣伝の「受け手」として、最近感じていることがある。

 それは、広告を伝達する「技術」が数十年前と激変し、そのせいで広告の「受け手」の状況も大きく変わっているのに、広告の「出し手」だけが、昔どおりの方法だけを続けているという印象なのである。

 先ほど、「てこの原理」などという変な言葉を書いた。また、このイメージを持ち出してみる。

 伝統的な、メディアに広告費を払ってPRするというやり方は、消費者を広告者が「じかに」押そうとする意味で、いわば、てこを使わない1:1の方法といえるだろう。

 情報の出し手が、ほぼプロだけだった時代には、これが当然の方法であった。
 しかし、いま社会でどのようなことが起きているだろうか?

 ネットの急速な発達により、情報の発信者の重心が、プロから一般人へどんどん移行している。
 人々が情報をキャッチするソースもまた、メディアでなく個人の割合が増している。

 テレビをあまり見ない/新聞を読まない若者が増えている昨今、この傾向は将来ますます高まるにちがいない。

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