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 では、具体的に、工作――と呼ぶのも大げさだが――の話に入ることにする。
 これは、実際に腰に当てて初めてお役立ちぶりがわかるところがあるので、だまされたと思って一つ作ってみていただきたい。

 まず、紙箱を一つ用意する。

 私がよく使うのは、森永のビスケット(マリー、ムーンライトなど、おなじみの商品)の箱である。大きさが簡単に言えるので例に出しただけで、むろん似たような箱なら何でもかまわない。

 マクラのような広くフワフワした支えでなく、ピンポイントと呼んだら大げさだがこのくらいの物で腰骨の所だけを小さく支えるのがいいのだ。
 背と背もたれの間にスペースが保たれ、夏場涼しいというのもこの小物のちょっとしたメリットである。

 人によっては――あるいはイスによっては――この箱より、厚さがもう少し欲しいかもしれない。実際に使うと、厚さはかなりつぶれてくる。

 次に、この空き箱のなかに、梱包によく入ってくるあのプチプチクッションを詰め込む。

 似たような物なら何だってよいのだが、使っていてズリ落ちない軽さ(これが案外大切)と、腰が痛くならない柔らかさと、支えとして十分な張りという点で、あの空気プチプチは理想的なのだ。
 少し、パンパンぎみに詰めたほうがいいと思う。

 あとはガムテープなどで箱を閉じればおしまいである。サイドの部分もテープで少し補強しておく。

 箱が適度につぶれつつ、角なんかも丸まってくると、たいへん使いやすいものになる。仕事場などで使う場合は、箱むき出しでは何なのでカバーでもかけたほうがいいかもしれない。


 私がこうした物をとりわけ使ったほうがいいと考えるのは、子供である。

 いわゆる良い姿勢というのは、続けるのがツライから敬遠されるのであって、子供が生来、良い姿勢というものに拒否感をもっているわけではない。
 人は易きに流れるものだが、私は易きに流れた結果、すごくラクなのでいつもこのサポートを腰に当てている。

 先ほども書いたが、姿勢というのは単に外観の美しさの問題ではなく、目だとか、腰だとか、肩こりだとか、首だとか(頭をいつも前へ落とせば、支えるここが疲れるのは当然だ)、いろんなところに影響を持っている。

 そして、視力なぞがすごい速さで悪くなって行きがちなのが、子供のころなのだ。

 私はまさにそうした視力低下を経験した者なのだが、両親ともまったく近視ではないし(親戚にもメガネは見当たらない)、暗い所で無理にものを見た覚えもない。唯一きわめて思い当たるのが、そうとうな姿勢の悪さなのである。
 それは、机にやたら目を接近させることにもつながる。そうした状態で、どれほど活字やマンガを凝視したことか。

 むかしは学校でも姿勢のことがうるさく言われ、生徒がそれに従う空気もあったが、今はいずれもほとんど消えている。
 放っておいて、自発的に背筋を伸ばす子供がどれほどいよう? まさに今の時代こそ、こういうグッズが非常に必要とされると思うわけなのだ。

 体をまっすぐにして座る時間がけっこう多くなって、最近感じることは、「良い姿勢でいることの快」というのが、そんなに強烈ではないもののヒトの中にはあるということである。できれば、子供のころ気づきたかったことだ。

 年をとるにつれ、むしろ次第に背筋が立ってきた人間の悔いのツブヤキである。

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