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最後に

 冒頭に書いたように、今回のフェルメール展はいろいろな意味で触発的であったので、感想を記そうにも、何から書き始め、どう構成したものか、実はちょっと困ったのである。

 そのとき、「デルフト眺望」に触発されて文章を書いたというプルーストのことが頭に浮かび、印象的な黒が上と下からカラフルなものを挟んでいるこの絵の構成を、そのまま文の構成にしてはどうかと思った。

 そんなわけで、この小文はあの「暗闇の少女」で始まり、黒雲が絵全体を引き締めているこの大作の話で終わることになったのである。他の内容は単純に、今回の色彩豊かなリ・クリエイト画をみて、驚きを感じた順番で書かれている。

 足を運べる方はぜひ、350年前に画家が塗った色彩を再現している「可能性のある」、鮮やかなリ・クリエイト画を見に行っていただきたいと思う。
 あるいは、「うちの地域でも展示をやってほしい」とリクエストをすれば、名古屋のケースのように、実現する可能性はあるのではないか。何しろ、当のものは印刷物であるから。

 もしこれから展示へ行く方があれば、ぜひおすすめしたい見方がある。
 フェルメールの絵が載っている、コンパクトな本(そうした本は数多く出版されている)をもっていき、関心のある絵について、原画とリ・クリエイト画を比較してみるのである。
 これはこの展示を、そうしない場合より2倍、3倍楽しむ方法だと思う。

 リ・クリエイト画の色合いに、「なるほど、こうだったんだろうな」と感じる場合も、そうでない場合もあるだろうが、比較することで初めて心に浮かぶことが多々あるにちがいない。
 この画家の絵が好きな人はむろんだが、まったく見たことがない人にも、これはおもしろい見方になるだろう。


追記 フェルメールとモンドリアンについて:

 この文章を上げる前に、二人の名前をならべてネット検索してみたところ、何と、日本のフェルメール研究の第一人者、小林頼子が、すでに二人を結び合わせてとらえていることがわかった。
 考えてみれば、共通したシンプルな色づかいなどの点で、これはさほど突飛すぎる連想ではなかったようだ。

 あの小林さんがこのようであれば、フェルメールの熱烈なファンから、「短絡的な発想をするな」と怒られることはなくすみそうである。
 少々セピア色になりつつある例えで恐縮だが、水戸黄門の印籠を手にした、格さんのような思いがする。


(フェルメールの絵がどのくらい古いのか、イメージがわくようあえてこんな比較をすると、フェルメールと水戸光圀(徳川光圀)はぴったり同時代人である。光圀のほうが、ほんの「四つ」上という年齢関係。
 光圀は、江戸幕府第3代将軍、家光のころに生まれた人だ。

 当時の日本人にあっては、西洋といえば「オランダ」である。光圀はオランダ製のメリヤス靴下を愛用したそうで、水戸家の墓所からそれが発見されているという。
 フェルメールと水戸光圀は、オランダ製の似たような靴下をはいていた可能性がある! これもまた、非常に遠いものが思いのほか結びつく話ではある。)

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