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ツブヤキ(2019/9/1):
 「下積みショウガ」を心配に思う話を一つ。

 街の牛丼店へ行くと、紅生姜がかなり深さのある容器に入っている。
 たいてい山盛りに近い状態で、生姜が上から1/3ほども減ろうものなら放置されず補充されている(容器の半分以下まで減っているのを私は見たことがない)。
 結果として、容器の上のほうだけで生姜の「消費⇔補充」がくり返されている。

 私が心配に思うのは、夏などかなり店内温も上がるなか、容器の底のほうで「下積み」のままずっと使われないでいる生姜の境遇である。
 酢漬けとはいえ、スーパーでパック商品を見るとわかるように、あれは「開封後は冷蔵庫で保存し、お早めにお召し上がりください」といった表示がなされる要冷蔵品だ。
 細かく切ったナマモノは、足がはやいから当然である。

 牛丼のお店は、不特定のお客が必ずしも清潔でない手で、容器をひんぱんに開け閉めする環境条件でもある。

 思うに、少し減るたびこまめに補充しているのだから、あの生姜容器は単純に、もっと底が浅いものにすべきだろう。
 そうした容器をちょくちょく交換するぶんには、残っている生姜を次はいちばん上へ積むといったことをしても、品質劣化の心配はないのである。

 牛丼が出てくるのを待ちつつ、あの容器をながめるたび、表舞台の機会をまいど新参者に奪われ、下積みを続けている生姜を不憫に思う。こういう扱いは、人だって生姜だって腐ってくるのだ。


ツブヤキ(2018/1/17):
 NHKが、いい加減だった話。

 「六角精児の呑み鉄本線・日本旅」というテレビ番組。俳優の六角精児が、乗ることと呑むことを目的として、地方のローカル線で旅をする。

 BGMには、六角バンドの、「痛風になったようだ」「医者から食事制限」「でも好きなものはやめられない」といった歌詞の、番組の雰囲気にやたらフィットした曲が流れる。

 思いつきで途中下車し、行き当たりばったりで、飲食店や酒屋へ入る。 タレントみずから入口を開け、「ここ、カメラ入っちゃって大丈夫ですか?」。

 そうしたアポなし訪問ゆえ、「あっ、六角さん、きのう大河ドラマに、ぞうり番で出てらしたですよね。それが、今日まさか……」と驚いて、笑いだしてしまう店員も。
 飲み屋で、近くに地酒を造っている所があるという話を聞き、翌日、さらに訪ねていったりする。

 先日の、廃線になる直前の、島根県にある鉄道の旅(私が見たのは正月の再放送だが)。
 地酒を造っている酒蔵へ、まばらにしかいない人に道を聞きつつ、えんえん歩いてたどりつく。

 その店は、翌日から酒づくりに入るという、非常に忙しいバッド・タイミング。
 しかし、若い、「宮藤官九郎」似の蔵元は、山近くの水源へ連れて行ってくれたり、酒蔵の設備を案内したり、酒を試飲させてくれたりと、ていねいな対応。

 だが、NHKゆえ宣伝行為は不可ということで、酒蔵名はまったくテロップ表示されない。
 テロップで、案内者が「蔵元四代目」なことは詳しくわかっても、「何の蔵元」かわからない。

 ローカル飲食店の看板を映すのはまだしも、商品となると気をつかう感じか。
 たぶん、お金で謝礼など渡さないだろうし、気の毒なことだと思って視聴している。

 酒豪・六角氏が目を閉じて試飲し、「これは、キリッとしたお酒だヮ」「透明感が、ほんとにある酒だな」「さっき飲んだ水の味わいを、ぜんぶ引き出してる」とおいしがるので、なお気になってくる。

 すると試飲の最後に、グラスを置く「はずみ」で映っちゃったというテイで、カメラが酒びんのラベルを、一瞬ではあるが映すのだ。

 「わざと」だろうし、このチラリ加減が実によかった。公共性と、「今日はありがとうございました」の絶妙バランス。
 冒頭に書いた「いい加減」は、「良い加減」の意味である。

 あのまま店情報を示さず終わったら、「いきなり訪問し、忙しい店主に案内させてNHKオーボーすぎるだろ」と、視聴者が逆に怒りを感じるところである。

 後日、ネットでその酒蔵のサイトを見たら、少数ながら、番組を見てここへ来ましたという書き込みがあった。
 そうした書き込みが大量でなかったのも、いい加減だった。

 公共放送による、公共放送ならではの、「絶妙のチラリズム」を見たお話。

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