朝ドラをフォールせよ
(とある民放局での会話)
A NHKの朝の連続テレビ小説、多少の波はあるけど、話題になる人気ドラマを次々作ってくるなあ。
B それに比べて、うちの朝の番組、数字ひどいですよねぇ。
うちも連続テレビ小説みたいな、強力な定番コンテンツを確立できるといいんですけど――。視聴者をオビで、毎朝クギ付けにできるような。
A 民放のなかでも、差別化を図りたいよな。各局の朝の番組、かなり似てきちゃってるし。
(数日後)
A いい企画考えたぞぉ。
もし実現したら出てもらう関係者にも打診したけど、やるなら全面的に協力しますよ、またテレビで黄金時代を築きたいからって、めちゃくちゃ反応よかったんだ。
B へえ、どんな企画です?
A 朝の連続テレビ小説に真っ正面から挑む、これだ。
(手にした紙をぴらりと見せる)
B 朝の連続テレビ格闘技ィ? (イスからずり落ちる)
A 略称は、「朝ファイト」でどうかと思うんだ。
プロレス、カラテ、何でもありでだなぁ、毎日のファイトのなかで、だんだんに因縁の対決とか、人気ヒーローとか、味のある悪役とかを生み出していくんだよ。
1日でも見逃すと、因縁の展開がわからなくなったり、お目当ての格闘家がやられて長期入院しちゃったり――筋書きのないドラマだからこそ、毎朝目が離せないわけ。
15分番組にして、朝ドラに直接ぶつけたらいいと思うんだ。
B うーん、さわやかな朝の食卓で、パイルドライバーや、逆エビ固めなんかを見たくない気もするんですが――。
A いや、まさに朝だから意味があるんだって。これは、この企画を考えた原点でもあんだけどさ。
望もうと、望むまいと、社会のなかで仕事というのは、しばしば格闘なわけだよ。ライバル会社との競争だったり、国際競争だったり、いろいろだけどさ。
1日の始まりにテレビで朝ファイトを見て、自らに闘魂を注入して、仕事場へ向かう。これを、日本人の新しい生活スタイルとして提案するんだ。
毎朝、うちの番組ですべての人に刺激を与えて、日本にふたたび高度成長期を作ろうじゃないか!
B (大きく出たなあ)
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