(いそいで駅のなかへ駆けこみ、ホームの一つへ出る。ちょうど電車が来ていて、客が乗り降りしている。
その客のかたまりの上方で、赤いものがパタパタ揺れているのが見える)
社員 いたぞ、あそこだ!
(赤いものが乗りこんだ口へ、ドアが閉まる間際に何とか走りこむ。
乗客たちが大きく引いてできた空間で、見慣れたロボットが、ゆかをショコショコと掃いている。
背後に回ってタックルをかけ、取りおさえる)
ルン暴 お掃除するぞぉ!(じたばた)
社員 しなくていいんだお前もう。
(コブラツイストでロボットを押さえこみ、その胸に手をやって電源スイッチを切る)
ルン暴 おそうじす……。(止まる)
社員 ハアハアハア。とりあえず何とかなったぞ。ハアハアハア。
次の駅で降りて、会社に車を回してもらおう。
……
こいつのお腹から、まず入場したカードか切符を探さんといかんだろか。もはや、ただの物体だから切符は不要か……。
(お腹を開けると、チラシ、落ち葉、たばこの吸い殻、クツなどが、中からドサっとこぼれ落ちる)
社員 うわ。
この割と新しめのクツは、こいつに襲われて転んだ、誰かのなんだろうなあ。(あとできっと苦情がくるぞ。ケガをしてないといいけど)
このゴミの山は、オレがお掃除だ……。
どん引きして格闘を見ていた乗客 何なんですか、このロボットは?
社員 ええと……何からお話ししたらよいものやら……その……わが社が発売しました最新式の掃除機、ルンボウでございます。
ごらんのように元気いっぱい、たいへん掃除熱心なロボットですので、電器店で見かけましたら皆様よろしくお願いいたします。
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