ご ついでと言ったら何じゃけども、お迎えがきて怪物が月へ帰っていくシーン、撮るの難しいから、ジブリがアニメとして作ってくれんかのぅ。
変わったものが空を飛ぶお話、すごく多いじゃないか、あそこ。そういう場面、描き慣れてるじゃろ。
八 たしかに、過去に魔女が飛び、ブタが飛んでますので、空飛ぶフランケン狼まで、そんなに距離がない気はしますが――。(山犬娘もいたしなあ)
ご 魔女……そうだ! 別に主題歌も作ることにして、そのタイトルを「フランケンの宅急便」にして、ヤマト運輸さんにタイアップを持ちかけてみよう。
むかしから、クロネコと恐い映画は、かなり親和性があるんだし――。
そうすれば久石先生にも十分な謝礼が払えるじゃろ。
八 主題歌なんか足したら、それを歌う歌手に、さらにお金がかかっちゃうでしょ!
ご そこは大丈夫。若いころ「うたごえ喫茶に舞い降りた一羽の天使」と呼ばれた、このわしが歌えばいいんじゃ。
八 ご隠居が主題歌を……。(この映画、底無しに劣化していくなぁ)
どうでもいいことですけど――天使というのは一羽、二羽と数えるんですか?
ご ああ、羽が生えているものは皆そう数えるのじゃ。
扇風機やタービンなんかもそうだった……ような気が……ちょっとする。
八 扇風機ねえ……。
ご 八つぁんも、ドから、何と一つ上のドまで声が出てしまうという、わしの奇跡の1オクターブボイスを聞いたら驚くぞ。
八 (3歳児でも、そのくらい出るだろ)
月へ帰っていくという、そのフランケン……吸血オオカミは、このまえ話してた親戚の子が演じるんですか?
ご その予定じゃけれども……当人が、どうもしぶっておってな。
前の恋愛映画のときも、脚本を読ませたら、顔面が北野ブルーになっていたのじゃが、今度の脚本はいっそうイヤがっておる。
八 (このご隠居の一族にも、まともな感覚の人はいるんだな)
ご わしと血がつながっておるというのに、まるで名馬ハイセイコーに対する、あのノンビリイコーのように情けないやつじゃ。プンプン。
八 (その情けないやつのおかげで、映画つくってるくせに……)
まあでも、今度のお話の主役は、素顔の出演じゃないぶん、前の映画より出やすいとこはあるんじゃないですかね。(まともな映画だったら、ちゃんと顔が出る役のほうが嬉しいだろうけど)
フランケンやオオカミ男の顔は、メイクか何かで作るんですか?
ご パーティー用グッズとして、フランケンの顔のかぶり物を売ってる店があったから、それを使おうと思ったんじゃが……何しろ真夏の撮影なんで、親戚の子がますますイヤがってな。
八 そりゃそうでしょ。(出演するだけで既に十分な苦痛なのに)
ご ところが天の助け、このまえ近くの夏祭りに出かけたら、夜店に、フランケンとオオカミ男のお面が両方あったのじゃ。
八 夜店のお面……。
ご あれなら夏に売っとるくらいだから暑くない。フランケンがオオカミ男に変身するハイライトシーンも、耳から輪ゴムを外して、お面をサッと替えるだけですむ。
八 輪ゴムを外して、お面を替えるのがハイライトシーン……。(この映画のヒドさは、ほんとに底なしだな)
そういえば、海辺のシーンにはサメも出てくるんでしょ?
ご ああ、サメのお面は残念ながら夜店になかったが、サメの出番はごく短時間だから、パーティーグッズのビニールのかぶり物をかぶらせることにした。
湘南の浜辺で、フランケンのお面をつけた男が、サメのノド元にキッスして、血を吸う――ここが、お客さんをちょっとドキドキさせるサービスシーンになっておる。
八 むしろ、迷惑シーンのような……。
(まあ、ラストまで席を立たずに残っている人、ほとんどいないだろからいいのかな)
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