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 ついでと言ったら何じゃけども、お迎えがきて怪物が月へ帰っていくシーン、撮るの難しいから、ジブリがアニメとして作ってくれんかのぅ。
 変わったものが空を飛ぶお話、すごく多いじゃないか、あそこ。そういう場面、描き慣れてるじゃろ。
 たしかに、過去に魔女が飛び、ブタが飛んでますので、空飛ぶフランケン狼まで、そんなに距離がない気はしますが――。(山犬娘もいたしなあ)
 魔女……そうだ! 別に主題歌も作ることにして、そのタイトルを「フランケンの宅急便」にして、ヤマト運輸さんにタイアップを持ちかけてみよう。
 むかしから、クロネコと恐い映画は、かなり親和性があるんだし――。
 そうすれば久石先生にも十分な謝礼が払えるじゃろ。
 主題歌なんか足したら、それを歌う歌手に、さらにお金がかかっちゃうでしょ!
 そこは大丈夫。若いころ「うたごえ喫茶に舞い降りた一羽の天使」と呼ばれた、このわしが歌えばいいんじゃ。
 ご隠居が主題歌を……。(この映画、底無しに劣化していくなぁ)
 どうでもいいことですけど――天使というのは一羽、二羽と数えるんですか?
 ああ、羽が生えているものは皆そう数えるのじゃ。
 扇風機やタービンなんかもそうだった……ような気が……ちょっとする。
 扇風機ねえ……。
 八つぁんも、ドから、何と一つ上のドまで声が出てしまうという、わしの奇跡の1オクターブボイスを聞いたら驚くぞ。
 (3歳児でも、そのくらい出るだろ)
 月へ帰っていくという、そのフランケン……吸血オオカミは、このまえ話してた親戚の子が演じるんですか?
 その予定じゃけれども……当人が、どうもしぶっておってな。
 前の恋愛映画のときも、脚本を読ませたら、顔面が北野ブルーになっていたのじゃが、今度の脚本はいっそうイヤがっておる。
 (このご隠居の一族にも、まともな感覚の人はいるんだな)
 わしと血がつながっておるというのに、まるで名馬ハイセイコーに対する、あのノンビリイコーのように情けないやつじゃ。プンプン。
 (その情けないやつのおかげで、映画つくってるくせに……)
 まあでも、今度のお話の主役は、素顔の出演じゃないぶん、前の映画より出やすいとこはあるんじゃないですかね。(まともな映画だったら、ちゃんと顔が出る役のほうが嬉しいだろうけど)
 フランケンやオオカミ男の顔は、メイクか何かで作るんですか?
 パーティー用グッズとして、フランケンの顔のかぶり物を売ってる店があったから、それを使おうと思ったんじゃが……何しろ真夏の撮影なんで、親戚の子がますますイヤがってな。
 そりゃそうでしょ。(出演するだけで既に十分な苦痛なのに)
 ところが天の助け、このまえ近くの夏祭りに出かけたら、夜店に、フランケンとオオカミ男のお面が両方あったのじゃ。
 夜店のお面……。
 あれなら夏に売っとるくらいだから暑くない。フランケンがオオカミ男に変身するハイライトシーンも、耳から輪ゴムを外して、お面をサッと替えるだけですむ。
 輪ゴムを外して、お面を替えるのがハイライトシーン……。(この映画のヒドさは、ほんとに底なしだな)
 そういえば、海辺のシーンにはサメも出てくるんでしょ?
 ああ、サメのお面は残念ながら夜店になかったが、サメの出番はごく短時間だから、パーティーグッズのビニールのかぶり物をかぶらせることにした。
 湘南の浜辺で、フランケンのお面をつけた男が、サメのノド元にキッスして、血を吸う――ここが、お客さんをちょっとドキドキさせるサービスシーンになっておる。
 むしろ、迷惑シーンのような……。
 (まあ、ラストまで席を立たずに残っている人、ほとんどいないだろからいいのかな)

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