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たそがれのカールおじさん江
(2017/6/16)

 半世紀近い歴史をもつ、明治のスナック菓子「カール」が、売れゆき不振のため販売を西日本のみへ縮小するという。
 誕生時を知る、あの丸ヒゲの「カールおじさん」は、たぶん私より長生きだろうと思っていたのだが……。 

 ビール等のつまみとしては味が淡白なので、大人になってからは縁遠くなったけれど、子供のころは、類似商品が無かったこともあり、カールを実にひんぱんに買っていた。
 ヘビー・スモーカーならぬ、ヘビー・イーター、あるいはチェーン・イーターとさえ、呼べたかもしれない。
 独特の触感と、特にチーズ味の風味に、中毒性があった。

 多々あるコーン・スナック中の1ブランドの、しかも販売「終了」でなく販売「縮小」が、これほど様々なメディアで大きく報道されたというのは、考えてみればすごいことである。
 そうした記事の一つに、次のような事実が書いてあった。

 購買者の年齢層が把握できるPOSデータによると、スーパーで最もカールを買うお客さんは40代。
 一方、10~20代は、この菓子をあまり買わない。

 CMが減少し、コンビニの棚でも見かけないため、若者はカールになじみがないのだ。
 要するに、いわゆる「老老介護」ではないけれども、いま「カールおじさん」を支えているのは、おじさんおばさんらしいのである。

 テレビ・新聞・雑誌等のメディアびとで、前線で活躍するとともに、どんなトピックを報じるか決定権をもつ層といえば、40代くらいだろう。
 そうした層が、カールの販売縮小(東日本撤退)を知って、「こりゃ大ごとだ!」と敏感に反応し、今回の大報道になったのではないだろうか。

 すばやく買占めに走り、スーパーのカール棚をあっという間に空にしたのも、たぶん彼ら世代だ。
 隠しても、君たちの素行は、過去のPOSデータに出ているぞ。

 もう少し高齢の、フットワークがやや遅い「思い出層」が、買えなくて困ったじゃないか。
 子供向けおやつの大人買いは、大人らしくひかえてほしい。


 明治によれば、カールの不振はポテト系スナックに押されたということだけれども、他社のコーン・スナックは、それなりに隆盛に見える。
 商品じたいが否定されているというより、ライバルに比べて、販売戦略にかなり原因があると指摘する記事もあった。

 今の時代、ということでいえば――。  

 明治は、CMで「チョコはうち」とアピールするのをよしてからも、チョコに他にない強さをもっていて、最近も健康志向の高カカオ(高ポリフェノール商品)が、十代女子から高齢者まで好評のようだ。

 そうした「甘くない」明治チョコをかけた、パッケージも菓子も大胆に小ぶりなカールがあったらいいと、個人的に思う。
 第二の中毒が始まり、口の周りがカールおじさんのようになるかもしれない。

 菓子の魅力はたんに味だけではなく、「噛む」喜びでもあるというのが、小学校高学年くらいからの私の持論(マイ喝破)である。歯が無くなるまで、私はこの持論を捨てないだろう。

 カールのあの触感は、人気ポリフェノールチョコのプラスアルファになり得るのではないか。

 えびせんやポテチが、からだの塩分欲求的にはもうケッコウになっても「手が止まらない」理由の一つは、人類のポリポリ噛み欲求であると私はにらんでいる。
 同じ味でも、これがペースト状だったりしたら手は止まるだろう。 

 あるいは、カールに愛着ある層が中高年へ達しているいま、おつまみになる味付け(ホットチリ味とか)の小粒カールなんかもいいかも。

 第一人者のプライドゆえか、カールは他社が考えた人気の味(バーベキュー味、ピザ味、メキシカンタコス味……)を採り入れることを、まったくしなかった。
 私見では、カールの「カレー味」「うす味」あたりは、20年くらい前でさえ、ライバル(ポテチ系を含む)の斬新な味に比べ、老朽化感があったと思う。

 カールおじさんには、少しコロモガエなんかして、西からまた東へ攻め込んでほしいものである。


P.S.  コーン・スナックといえば――。
 これは他メーカーの商品の話だけれども、「バーベキュー味」「チーズ味」といった味つけ種類とならび、「焼きトウモロコシ味」というのがあるのはちょっとふしぎ。

 本体がもともとトウモロコシであるゆえ、たんに「焼き味」でよくはないか。

 いや、それじゃ何のことだかわかりませんがな。

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