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りりしいお供

(顔なじみの主婦ふたりが、道で出会う。片方は犬を連れている)

 こんにちは。
 あら、こんにちは。
 うわ! おたくのブルドック、久しぶりに見たら、なんかすごく、りりしい顔になってません?
 (笑顔になる) ええ、実は整形手術したんですよ。
 鼻を高くしたり、目のたるみをとったり……。
 永遠の青春スター、ジェームズ・ディーンに、なるべく近づけてもらったの。
 ジェームズ・ディーン……。
 言われてみれば、たしかに面影が。
 哀愁を帯びた目もとの再現が、いちばん難しかったんですって。「エデンの東」の彼をイメージしてもらったんだけど。
 (名画「エデンの東」に、この犬をワンカットでも横切らせたら、全体が瞬時にコメディになるほどのパワーがあるな) これで、おいくら、かかったんですか?
 200万円くらい。
 200万……。
 やっぱり、元がブルちゃんだから、ビフォー&アフターの差が大きかったんですよ。
 お医者さんも、特別な値段でなきゃやれないって言うし。
 特別な値段でも、手術をしてくれたことがすごい。
 こういう素敵な顔にしてから、他の犬に、すごくもてるようになってねぇ。
 (ほんとかなあ。ブルドッグはブルドッグで、人間のことを、変な顔だと思ってるんじゃ……)
 名前も、この素敵な顔でポチじゃおかしいでしょ? だから、ジェームズに変えたんですよ。
 おかしいのは、名前というより……。
 こうなると、欲が出てきちゃってね。からだも人間に近づけようかと。
 顔だけだと、やっぱり変でしょ?
 からだも近づいた方が、さらに変だと思いますよぉ。
 あっ、そんなところにおしっこするんじゃないの!
 (体はブルドッグで、顔だけジェームズ・ディーンの生き物が、片足を上げておしっこをしながら、こっちを見ている。シュールな光景だ……。今晩、きっと夢に出てくるヮ)

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