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日本の隠れた人気スポット

(海外の旅行会社と組んで、訪日観光を扱っている小さな旅行会社)

社員 社長、このまえ連絡が来た、イギリスからの団体旅行の件ですが。
社長 ああ、10日ほど前のあれね。どうなった?
社員 日本での訪問場所は、1ヶ所だけなんだそうです。あと、ほかの国も行くらしくて。
社長 そういうの、たまにあるな。
 ディズニーランドあたりかい?
社員 いや、それが……東京の「目黒寄生虫館」なんですよ。
社長 えっ、あのマニアックに有名な?
社員 はい。それで、その道のエキスパートの通訳をつけてほしいと。
社長 そんな人、いるのかなあ? どうやって探したらいいのかも、見当つかないよ。
 学者か何かの集まりなのか?
社員 いや、広告で募集した一般客らしいですよ。
社長 最近はネットが発達して、びっくりするようなものに詳しい外国人がいるけど、ついにここまで達したのか。
 何人のツアーだい?
社員 83人だそうです。
社長 国内で企画したって、そんなに集まらないだろうに……。
 あそこ、そんなにたくさん入れるのかなあ。

(ネットで目黒寄生虫館のホームページを見る)

社長 あっ、立派な英語のホームページが作られてる!
 何と、ミュージアム・ショップのページまであるじゃないか。(あそこ、「ミュージアム」だったんだ。そういえばそうか)

(ショップのページをスクロールする)

社長 Tシャツを売ってるぞ。「立体サナダTシャツ」「サナダムシのリアルさは格別です」か……これ着て街を歩くのはかなり度胸いるなあ。
 携帯ストラップも売ってるのか。
 わわっ、「ニベリン条虫の封入ストラップ」。本物の寄生虫を封入してるとは……。
社員
 誰のお腹にいたのを、入れてるんでしょうねえ。通信販売もしてるし、売れすぎて、虫が不足したらどうするんだろ。
 館員が、ミュージアムの正規業務として、それぞれ育ててるのかな?
 んなわけないか。
社長 ヒトの外で、養殖をしてるんじゃないか? いけすみたいなとこで、人間と同じ食べ物をやって。
社員 条虫が、メダカみたく泳いでるんですか? それじゃもう寄生虫じゃなくなりますよ。
社長 そりゃそうだ。
 これは、むかし漫才でやっていた、「地下鉄の電車は、どこから入れるのか?」というナゾに匹敵するぞ。
社員 衛生状態がまだ悪い外国から、輸入してるのかな? それとも、人間に入る前のやつなのか。
 こんど、この団体旅行に付き添う者に、聞いといてもらいましょう。
社長 世界広しといえど、たしかにこういうふしぎなミュージアムは、日本にしかないかもしれんなぁ。ちゃんと学問的な施設でありつつ、こういう大胆グッズも作っちゃうという。
社員 前に、某大手新聞の「親子で訪れたい1テーマ博物館」という記事で、あそこが堂々2位になってるのを見ましたよ。
 実際、親子連れやカップルで来館する人が、ずいぶん多いとか。
社長 へえ。こういう方向に突出しているぶんには、18歳未満、入場禁止ということはないんだ。
社員 この英語のホームページにしても、グッズの紹介をしてるくらいだから、外国人観光客向けじゃないですかね。
社長 状況が、かなり見えてきたぞ。
社員 ええと、訪日に関して、先方から通訳のほかに、もう一つ具体的な依頼がありまして。
社長 何だい?
社員 当日の昼食は、和食でもいいが、めん類は避けてくれと。
社長 うーむ、常人なのか変人なのか、よくわからないお客さんたちだ。
 「恐いもの見たさ」って言葉、英語にもあるのかな?

(注:上記のミュージアム関係の情報は、すべてフィクションでなく事実であります。
 話全体も、ひょっとしたら実話に近かったりして……)

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