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古代人の嘆き

(中東の、とある地域。砂のなかから古い遺跡が発掘される。
 風化したその壁に、古代文字による文章の一部が見つかる)

 専門家による、文章の解読結果が届きました。
 そうか、いったい何て書いてあったんだ?
 それが……長い文章のごく一部分らしいんですが、現代語に直しますと、「まったく、今どきの老人はがまん強さが無くなったもんだ」だそうです。
 なんだい、今もよく聞く、「今どきの何々は」という嘆きの言葉だったのか。
 しかし、これ、どんな人物が書いたんでしょうね。
 今どきの老人について嘆いているんですから、老人より、はるかに上の世代の人ってことでしょ?
 老人より、はるかに上の世代……。
 存命中の人なら、自分も老人だから「今どきの老人は」とは書かんだろうなぁ。
 ふむ、たしかに妙だ。
 今どきの老人……。
 誰なんだろう、嘆きの主は……。
 もしかすると、当時のイタコか何かがしゃべった言葉じゃないでしょうか?
 (ヒザを打つ) ああ、すでに死んだ人の言葉だとすれば、世代のつじつまが合うな。
 彼らにしてみれば、生きてる連中なんか、ぜんぶ若造だ。若造の高齢者たちだ。
 なるほど、イタコか。(笑顔)
 イタコでつじつまが合ってどうするんだよ!
 だいたいこんなの、壁に苦労して刻んで、わざわざ後世に残すような言葉か?
 仮にイタコのしゃべりだったとしても、こんな発言を壁に刻まなくていいだろ。
 たしかに、1字1字彫るのは、当時にしたらかなりの手間ですもんね。
 ひょっとすると、後世の僕らのこういうリアクションをみんな見越した、古代人の遠大なジョークなんでしょうか?
 そういうばかばかしい話に熱意を注ぐ人間は、現代にもいるし。
 ううむ、ひとつ謎が解かれたかと思ったら、また大きな謎が……。
 こっちの謎は、おそらく未来永劫解けませんねぇ。

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