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打開策があります

(とある国際試合で、完敗を喫したバレーボール男子日本代表の監督。試合後、イスにもたれて、誰に言うともなくつぶやく)

監督 今日の試合は、相手の高さに完全に封じ込められた感じだったなぁ。
 チームの平均身長が、8センチも違うんだもんなあ。敏捷性やチームワークなんかじゃ、こっちが明らかに勝ってるのに。
 うちの選手の身長が、平均あと5センチでも高けりゃ、絶対負けないんだけど――。
 まあ、それは言ってもしかたのないことだな。

(後ろで聞いていた選手が、監督に話しかける)

選手 監督、その点ですが、たまたまこの前、スゴイ打開策を発見したんです!
監督 おう――高砂か。なんだ打開策って?
選手 実はボク、相撲が大好きなんですよ。もし、縦じゃなくて横に大きかったら、ぜったい相撲取りになってたと思います。
監督 相撲だぁ?(何を言い出すんだこいつ)
選手 ええ。それで、古本屋で、ちょっと昔の相撲雑誌をよく買うんです。そこに、当時の新弟子検査の記事が載ってたんですよ。
 そのなかに、合格基準に、身長だけ足りない人が、頭の皮の下にシリコンを入れて、身長を5センチ高くしてる写真があったんです。
監督 ああ、オレも前に見たことあるけど……。
選手 うち全員で、あれやりましょうよ! あれは、5センチ足りないから5センチにしただけで、頭にもっとシリコンを入れて、10センチ高くすることだってできると思うんですよ。
 そしたら、世界でも1、2を争うチーム平均身長に――。
監督 おまえ、バレーは身長が重要ったって、文字どおりの意味じゃないんだぞお。
 頭突きで球をブロックしたりするスポーツじゃないだろが!(バレーをよく知らない人じゃ絶対ないだろおまえ?)
選手 でも、よく言われる平均身長の比較の数値で、具体的に相手をシノいでるぞっていう、優位な気持ちにはなれるじゃないですか!
 それに、相手をすごく動揺させる効果もあると思うんです。
 コートに入ったとき、向き合った相手の選手全員が、頭の上に10センチ分シリコンを入れて、こちらをギロリとニラんでたらどうでしょう? そんな光景、ご覧になったことあります?
 ふつうの人間だったら、とても平常心ではいられませんよ。まして、ただでさえ平常心ではいられぬオリンピックなんかでは――
監督 そんなの、最初の5分くらいビックリするだけだろうが! 逆に、爆笑していっぺんにリラックスしちゃうかもしれんぞ。
 だいたい、高さ10センチのシリコンが、あたまの上でいつもプリプリ揺れてたら、こっちのプレーに思いきり差しつかえるだろ!(胸に入れてる人を見た感じじゃ、かなり柔らかいぞあれ。さわったことないけど)
 手がとどく範囲が問題なんで、頭がとどく範囲なんて何の意味もないんだよ!
選手 それじゃ、あたまの上じゃなくて、手の先と、足の裏のとこをシリコンでふくらましたらどうでしょ? たとえば、それぞれ5センチくらい――。
監督 まともに歩けるかあ、そんな足で!
選手 跳躍力が増すかもしれません。ドクター中松のジャンピングシューズみたいに。
監督 それはそれで、規則でぜったいアウトだろがぁ。
 おまえ、いいかげんシリコンから頭を離せよお!
選手 すいませ~ん。(思いついただけで、ボクもまだ頭に入れてないんですう)

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